VELVET SOUND 誕生の裏側
2019 年 4 月
Inside Story #01
VELVET SOUND の裏側に迫る
開発秘話など、VELVET SOUND のインサイドストーリー
INSIDE
AKM は、2014 年に 新世代アーキテクチャー VELVET SOUND ブランドを発表。
低歪技術をブラッシュアップし、THD+N -112dB を達成した第 3 世代プレミアム DAC AK4490EQ をリリースしました。
その開発にはどんな思いが込められていたのでしょうか。
VELVET SOUND が誕生するまでの経緯など、開発者インタビューを通じてその裏側に迫ります。
Inside Story #01
Ms. Seiko Nakamoto: VELVET SOUND chip designer
◆ VELVET SOUND ブランドの構想は、いつごろ始まったのでしょうか?
「VELVET SOUND」という名前は 2011 年ごろから考えていました。当初は、ブランド名ではなく「何か AKM DAC の代名詞になるような技術名を打ち出して商標化したい」と提案していました。技術開発の途中ではありましたが、これまでの世代から一新する技術基盤の構想は固まっていたので、それを良い形で世に出すための道を作っておきたくて。そして、当時のマーケティング責任者から「技術名でなく、オーディオブランドとして立ち上げては?」という助言をいただき、動き出しました。
◆ VELVET SOUND の名前の由来は?
当初は技術名のつもりでしたが、技術を表す名前ではなく、私たちが目指す音のイメージを表す名前を考えていました。そこで、思いついたのが「VELVET」。調べてみると、
・高級服飾素材 → 高級なイメージ
・元来は絹が原料 → 本物の生きた素材。艶っぽくて様々な表情がある。
・柔らかいため、腕の良い職人しか扱えない → 匠の証
・レコード拭きに使われていた → 音楽に関係ある
・大正~昭和初期にレーヨンを原料としたものが登場して大きく普及 → レーヨンといえば旭化成!
ということで、もうこれはピッタリだと。
◆ 名前が決まったら、ブランド化が進んでいったのでしょうか?
いいえ。最初はブランド化どころの話ではなかったです。設計の立場として何よりも苦しかったのが、性能が出ていなかったことです。歪み特性もノイズ特性も競合メーカーに 7~8dB の差をつけられ、業界では 2 番手?3 番手? さすがにブランドになるのは無理だろう、と。
一方で、音質は競合メーカーに負けない自信はありました。「絶対に AKM のほうが良い音を出せるのに」と思いつつも、性能面で No1 クラスでなければただの負け惜しみにしか聞こえない。何とかしなくては、という焦りがありました。
◆ 音質に自信があったのはなぜでしょう?
性能向上に取り組んでいた傍らで音質改善にも取り組んでいて、こちらは着々と結果が出てきていたからです。その当時よりさらに遡った 2000 年代前半頃、特性は AKM が No1 なのに音質では認められない、という時代がありました。その頃の経験があったので、目標性能だけを達成しても残念な結果になってしまうことは分かっていましたし、反対に、性能指標以外に音質を改善できる技術が手に入れば、それはかなりの強みになると確信して取り組んでいました。オーディオマイスター佐藤を中心としたプロジェクトチームで、本当にあれこれ実験を重ね、「VELVET SOUND」の名前を考えた頃には、私たちの基盤となる理論は出来上がっていました。
◆2014 年のブランドリリースに向けて、具体的にはどのような性能を改善したのでしょうか?
主に歪み特性、帯域外ノイズの 2 つです。ブランドリリース時の代表作は AK4490 ですが、このとき新しく開発した「低歪みテクノロジー」「OSRD テクノロジー」によって、歪み特性、低帯域外ノイズ 特性を過去製品から大幅に改善させました。そして、これら 2 つの性能改善により、その他の多くの技術も日の目を見ることができるようになったわけです。苦しい時代を一緒に乗り切った開発チームの皆には本当に感謝しています。
◆ AK4490 が完成して、無事にブランドリリースにつながったわけですね。
はい。もちろん、「ブランド化しよう! → AK4490 ができました → はい、ブランド完成!」というわけにはいかないですから、無事にリリースできて嬉しかった反面プレッシャーも増えました。いわゆる”一発屋”だとブランドにはなれませんので、絶対に次を成功させないと、という思いはより強くなりました。
◆ 何を目指して VELVET SOUND ブランドを立ち上たのでしょうか?
「オーディオといえば VELVET SOUND だよね」と、必ず名前が挙がる存在になりたい。それだけです。そのために、いろんな人に私たちのことをもっと知ってもらいたい。AKM オーディオの存在も、私たちがオーディオを通して感じる世界を届けようとしていることも、そのためにどんなことをしているかも。
今回リニューアルしたブランドサイトを通して、そういったことを感じ取ってもらえると嬉しいです。
製品開発センター 製品開発第一部 主幹技師
20 年以上にわたり DAC 製品の設計を担当し、コア技術を開発。VELVET SOUND ブランドを率いる中心メンバーの一人。