用語解説

2020 年 4 月 

VELVET SOUND の技術用語

オーディオ製品でよく使われるあの言葉って何?

旭化成エレクトロニクス (AKM) のオーディオ用語解説ページです。
S/N や THD など、知っておくとオーディオ製品の理解がより一層深まる基本的な言葉について、オーディオエンジニアが解説します。

* エンジニア視点では必ずしも正確ではない表現もありますがご了承下さい。
それぞれの詳細をお知りになりたい方は、JEITA 規格 CP-2402A をご覧ください。

人間が音として認識できる周波数帯域 (可聴帯域) は、通常 20Hz ~ 20kHz くらいの幅といわれています。このため、オーディオ特性も、~ 20kHz (または~ 22kHz) で規定されています。

* ちなみに、年齢を重ねるにつれ、高い周波数 (高音) が聴こえづらくなってきます。私は 16kHz の音は何とか聴き取れますが、20kHz は全く聞こえません。…筆者の年齢がばれてしまいますね。

Audible Frequency Band and Measurement Bandwidth

bit 数で表されるデジタルデータの細かさの指標です。定規の目盛と考えてもらえればわかりやすいと思います。30cm 定規の 1目盛 1mm が、おおよそ8bit データ (2の8乗 = 256) の分解能と同じです。

それではオーディオデータはどのくらいのものか考えてみましょう。CD は 16bit データ (2の16乗 = 65,536) です。これを 30cm 定規で例えると、1目盛が髪の毛の太さの 1/10 (約4.5um) になります。24bit データ (2の24乗 = 約1.6千万) のDVDでは細菌のサイズ (約18nm) が1目盛。32bit (2の32乗 = 約43億) のオーディオ音源だと、ヘリウム原子サイズ (約70pm) の目盛ということになるわけです。

それほど、人間が想像できないレベルの細かさでオーディオ信号は表現されています。デジタルカメラの解像度が上がると画像がきれいになるように、分解能が上がれば上がるほど音の再現度が上がり、「原音」に近づきます。

音の大きさや信号の強さの比を表す単位です。d (デシ) は 1/10 という意味の接頭辞です。

音の大きさなど人間の感覚は、実際の物理量の対数を取ったものに比例するといわれています。このため、音も、人間が認識しやすいように対数量である dB で表されます。オーディオ業界では、ざっくりいうと、「(桁数 -1) x20」にすると dB になります。

Ratio

読んで字のごとく「信号÷ノイズ」を計算したものです。単一周波数 (オーディオでは基本 1kHz) の最大出力に対してのノイズとの比で計算されます。ノイズがどれぐらいの大きさで聞こえるのかが指標となっているため、人の耳の感度をモデル化した A-weight カーブで補正して計算するのが通例です。この S/N が大きい方がオーディオとしては良い性能となり、昔からオーディオの重要な指標となっています。

この値が小さいと、音源とは無関係な "サー" という音 (いわゆる「ホワイトノイズ」) が聞こえてしまいます。つまり、小さな音源が聞こえづらくなるわけです。お手持ちのオーディオ機器で何も再生しない状態にしたままボリュームを最大にすれば、"サー" 音を聴くことができます (この音が聞こえない細工をしているシステムもあります)。…ただし、お試しの際には、細心のご注意を! 最大ボリュームなので音源を再生してしまうと、爆音が鳴ってしまいます!

DR (ダイナミックレンジ) と似ていますが、こちらは信号が入力されていない状態でのノイズとの比となります。

人の耳の感度をモデル化した周波数特性です。2~3kHz 周辺でピークを持っています。

ノイズがどれぐらいの大きさで聴こえるのかを重視している特性は、このカーブで補正します。S/N、DR は、A-weight カーブで補正して計算するのが通例です。

A-weighting A 特性: 低周波部分は人には聞こえないので小さくなる

これら 2 つの指標は同じ意味を表しており、信号以外の成分 (歪み成分+ノイズ成分) がどれぐらいあるのかを示しています。メーカーによって表記が異なるだけです (但し数値として表した時には計算式の分子と分母が入れ替わっているため、dB 単位では符号が変わります)。

 THD+N  = (Distortion + Noise)/Signal

 S/ (N+D)  = Signal/(Distortion + Noise)

いずれにせよ、絶対値が大きいほどノイズ・歪み成分が小さいことになります。逆に、この値が小さいほど (歪みが大きいほど)、元の波形から変わってしまうことになります。

* ちなみに通信分野では「SINAD (Signal-to-noise and distortion ratio)」と呼ばれ、通信品質の指標として使われています。

別名「クロストーク (Crosstalk)」とも呼ばれます。この値が低いと、例えば、ステレオの右チャネルから出る音が左から、左チャネルから出る音が右から聴こえてしまいます。つまり、片方のチャネルからの漏れ込み量を表したものになります。

実験によると、この特性を 30dB 以下まで悪化させると人間はその違いがわかってしまうとのこと。一般的なオーディオ IC は 90dB 以上あり、これは人間が知覚できる 1/1000 以下のレベル。通常は問題になることはありません。

チップ内でチャネルごとに出力の差がどれぐらいあるのかを示しています。ほとんどの製品はこの値は非常に小さい値になっています。

ステレオやイヤホンの右と左で音の大きさが違っているのは聴いていて気持ち悪いですよね。アンプ機器では左右のバランスを変更できるようになっているものもありますが、左右個別にボリューム調整するなんて普通ではあまり聞いたことはないと思います。